訪問介護開業前に理解しておきたい、訪問介護の基本報酬|2時間ルール、20分未満のサービス提供、身体介護と生活援助の違い

訪問介護開業前に理解しておきたい、訪問介護の基本報酬
井ノ上剛(社労士・行政書士)

これまでは一人の訪問介護員だったあなたも、訪問介護事業の開業後は、経営者として訪問介護サービス報酬の算定を行わねばなりません。訪問介護の基本報酬、身体介護、生活援助の意味、対象外のサービス、2時間ルールなど詳しく理解していますか?このコラムでは訪問介護開業者向けに、基本報酬を中心としたの報酬算定ルールを解説します。

このコラムの推奨対象者

・訪問介護の基本報酬の算定ルールを理解したい人
・身体介護、生活援助のしくみを理解したい人
・訪問介護の2時間ルール、20分未満ルールを理解したい人

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タスクマン合同法務事務所は介護障害福祉事業に専門特化して、開業と運営のサポートをしています。このコラムのリライト(更新)時点である、令和3年7月現在、介護障害福祉事業の開業支援件数が、累積400社を超えました。日々多くのお客様から、訪問介護事業の開業相談をお受けしています。安心してコラムをお読みください。

訪問介護の基本報酬を理解しよう

訪問介護開業前のあなたが、先ず初めに理解しなければならないポイントは、訪問介護費の基本報酬です。。訪問介護費の基本報酬は次の3つに分類されます。

身体介護中心型

・20分未満 167単位
・20分以上30分未満 250単位
・30分以上1時間未満 396単位
・1時間以上 579単位+1時間から計算し、30分ごとに84単位

生活援助中心型

・20分以上45分未満 183単位
・45分以上 225単位

通院等乗降介助中心型

99単位

このコラムでは3つのうち、「身体介護」と「生活援助」について、解説します。3つめの「通院等乗降介助」については、別コラムで解説していますので、後ほどご参照ください。

訪問介護の通院等乗降介助とは?算定条件と仕組みを解説
訪問介護の通院等乗降介助とは?介護タクシーとの関係は?院内介助は?介護保険法 訪問介護の通院等乗降介助の算定条件と仕組み

基本報酬に上乗せで支給される各種加算については、次のコラムをご参照ください。

小規模多機能型居宅介護
訪問介護の初回加算、2人で訪問介護、夜間早朝割増、緊急時訪問介護加算、認知症専門ケア加算について理解しよう!

身体介護、生活援助の意味を理解しよう

身体介護

身体介護とは、「訪問介護員が利用者の体に直接接触して行う一連の行為」を言います。食事介助の場合を例に説明します。

食事介助は単に食べ物を口に運ぶ介助を行うだけでなく、

「利用者に対する声掛け」→「訪問介護員の手指洗浄」→「利用者の手拭き」→「エプロンがけ」

などの事前準備から、

「食後の世話」→「気分の確認」→「後片付け」

これらの一連の行為として考えます。

身体介護の例

排泄、食事介助
入浴、身体整容(歯磨き、洗顔、整髪など)
体位変換、移動
起床・就寝介助
服薬介助

生活援助

生活援助とは、単身利用者、または家族と同居はしているものの、家族が障害や疾病などの理由で、家事が十分に出来ない場合の介護サービスです。具体的には次のサービスを指します。

生活援助の例

掃除、洗濯
ベッドメイク
衣類の整理、被服の補修
調理、配膳
買い物、薬の受取

厚生労働省が次のような通達を出しているので、確認しておきましょう。

生活援助に関する厚労省通達

単に同居家族の有無、または同居家族の障害疾病の有無だけで、訪問介護(生活援助)の利用判断を行ってはいけない。

要するに、客観的な情報だけで一律に訪問介護(生活援助)を利用できるかどうかを判断するのではなく、個別の利用者の生活環境に着目しましょう、という意味です。

生活援助加算(身体介護に引き続き生活援助を行った場合の訪問介護費)

身体介護と生活援助、それぞれの意味が異なる以上、介護保険の算定では分離して考える、という事は言うまでもありません。しかし一連の介助の中に、身体介護と生活援助が混じっている場合、身体介護の含まれる度合いに応じて、次のように考えます。

なお、この問題を考える前に、訪問介護の基本報酬は「身体介護>生活援助」となっている点を改めて抑えましょう。つまり、訪問介護事業所としては、できる事なら「身体介護」で介護報酬を請求したい、という意識が働くという意味です。

5分の調理(生活援助)の後、50分の食事介助(身体介護)を行った

☑55分の身体介護と考える

居室の掃除のため5分の移動介助(身体介護)の後、35分の居室掃除(生活援助)を行った

☑40分の生活援助と考える

ケアプランに基づき、身体介護と生活援助を連続で行った

☑身体介護(20分未満は除く)+ 生活援助開始20分から起算して25分ごとに67単位

つまり適切なケアプランに基づき、1回の訪問介護において、身体介護と生活援助を連続して行う必要があるときは、この算定方式を取ることができる、という意味です。

訪問介護対象外のサービス

利用者本人の仕事の手伝いや、利用者の家族のための援助、その他訪問介護員が行わなくても日常生活に支障が生じない援助は、訪問介護費(生活援助)の対象とはなりません。

また訪問介護の「主な目的」が、利用者の安否確認、健康チェックであり、それに伴い若干の身体介護または生活援助を行う場合にも、訪問介護費は算定できない点に注意しましょう。

訪問介護の2時間ルールとは?

先にご説明した通り、訪問介護費は、

「短時間のサービスの方が、時間当たりの報酬が高く設定されている」

ということが分かります。つまり長時間のサービス提供は「移動時間」がないことで、サービス提供効率が上がるため、その分報酬単価が逓減する形式が取られているのです。

この制度に便乗して、

「あえて短時間サービスを1日の中で繰り返し提供する方が報酬が高くなるのではないか?」

という疑問が湧きます。

この問題の対策として、訪問介護ではいわゆる「2時間ルール」という制限が設けられているので、その内容を解説します。

訪問介護の2時間ルール

前回のサービス提供から2時間以上空けないと、それぞれのサービス提供時間を分離することができない(つまり合算しなければならない)。結果として、長時間サービス提供とみなされ、分離算定する場合に比べて、報酬単価が下がる。

以上が「訪問介護の2時間ルール」の趣旨です。

なお、1人の利用者に対して数名の訪問介護員が交代で訪問介護を行った場合も、このルールは適用される。

☑例外的に2時間ルールが「適用されない」ケースは以下の通り

①緊急時訪問介護加算が算定される場合
②医師が回復の見込みがないと判断する「看取り期」※令和3年度改定

20分未満の訪問介護は使えるケースが限定される

訪問介護のうち、身体介護の基本報酬をもう一度掲載します。

身体介護中心型

・20分未満 167単位
・20分以上30分未満 250単位
・30分以上1時間未満 396単位
・1時間以上 579単位+1時間から計算し、30分ごとに84単位

訪問介護(身体介護)は20分以上のサービス提供が原則であり、ここでいう「20分未満」の訪問介護は例外的な措置であるということを理解しましょう。

20分未満の訪問介護は、次のようなケースで例外的に算定できます。

20分未満の訪問介護を算定できるケース

・認知症など、短時間かつ頻繁な日常生活の注意が必要な利用者である場合
・サービス提供する事業所が24時間体制で連絡・連携できる場合
・「緊急時訪問介護加算」を算定する場合

以上のように、短時間でのサービス提供が必要不可欠な例外に限り、20分未満の訪問介護を算定することが出来ます。

実際に要した時間ではない

最後にこのコラムで繰り返し説明している、「時間」についてご説明します。

訪問介護費を算定するにあたり、その根拠となる「時間」とは、実際に要した時間ではなく、「そのサービスを行うために必要な標準時間」のことです。

よって、身体3(30分以上1時間未満)の介護サービスが、たまたま利用者の体調が良かったことが理由で、「30分未満」で終わった場合でも、身体2(20分以上30分未満)で介護報酬を算定する必要はなく、「本来の30分以上1時間未満」で報酬算定することができるわけです。

しかしそれが常態化している場合には、介護支援専門員(ケアマネージャー)に相談の上、訪問介護計画の見直しを行う必要がある点にも注意しましょう。

まとめ

以上が訪問介護における介護保険報酬の基本的な考え方です。

このコラムで解説した部分が基軸となり、別途加算報酬が算定されていきます。加算報酬については別コラムで詳しく解説していますが、訪問介護開業準備段階においては、まず本コラムの基本報酬部分を確実にマスターすることをお勧めします。

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