訪問介護の通院等乗降介助とは?介護タクシーとの関係は?院内介助は?介護保険法 訪問介護の通院等乗降介助の算定条件と仕組み

訪問介護の通院等乗降介助とは?算定条件と仕組みを解説
井ノ上剛(社労士・行政書士)

訪問介護には「身体介護」、「生活援助」、「通院等乗降介助」の3種類があります。「通院等乗降介助」とは、要介護者が病院等への通院で車に乗降するときの介助を介護保険でカバーするものです。誤解しやすいですが、実際に車に乗っているときの「運賃」は介護保険の対象にはなりません。介護タクシー、通院等乗降介助の仕組みを解説します。

このコラムの推奨対象者

・介護タクシーと通院等乗降介助の関係を理解したい方
・通院等乗降介助の算定要件を理解したい方
・通院等乗降介助の前後に身体介護を行った場合の取り扱いを理解したい方

このコラムの信頼性

タスクマン合同法務事務所は、介護障害福祉事業の支援に特化した、専門事務所です。このコラムのリライト(更新)時の令和3年7月時点、介護障害福祉事業の累積開業支援実績400社突破。日々、訪問介護や介護タクシー、通院等乗降介助のご相談に対応しています。安心してお読みください。

訪問介護の通院等乗降介助には介護タクシーの許可が必要

訪問介護の通院等乗降介助(98単位)を算定するためには、介護タクシーの許可が必要です。

4種類ある介護タクシー免許(許可)については、別コラムで詳しく解説しているのでご参照ください。

介護タクシー開業前に整理したい、《4つの介護タクシー》比較~道路運送法 
介護タクシー開業前に整理したい、道路運送法 《4種類の介護タクシー》比較

会社として上のコラムで解説している「介護タクシー許可」を取らなければならないわけですが、「通院等乗降介助」に関連する許認可についてまとめると次の通りとなります。

介護保険法に基づく訪問介護サービス指定を得ると

介護タクシーの乗車降車介助が介護保険の算定対象となる(98単位)
訪問介護(通院等乗降介助)の指定を得ていないと、この乗り降りのサービスが、利用者の全額自己負担となる。

道路運送法に基づく介護タクシー許可を得ると

利用者から運賃をもらって、輸送することができる、いわゆるタクシー業を営業できる。
(無許可営業は禁止されている)

上記から分かる通り、運賃については、いずれの場合も介護保険の算定対象にならない点を理解しておきましょう。

通院等乗降介助を算定するための条件

通院等乗降介助を算定するためには、

車両への乗車降車の介助を行ったうえで・・・

・乗車前または降車後の移動介助
・通院先での受診手続き、移動介助

以上、2つのうち、どちらかの介助を行う必要があります。

つまり、介護タクシーへの乗車・降車の介助だけでは通院等乗降介助を算定することはできず、乗車前後の移動介助または通院先での受診手続き、移動介助をセットで行う必要がある、という意味です。

令和3年度改定

「居宅」が始点または終点となる場合には、その間の病院間移送、または通所施設と病院の間の移送も算定可能となりました。

院内介助で訪問介護費を請求することができるか?

次に病院内の介助について考えてみましょう。以下に記載するのは通院等乗降介助の一連の動きです。

通院等乗降介助の一連の動き

乗車前介助(声掛け説明)

これから通院のために介護タクシーを使う旨を説明。

STEP
1

乗車介助

実際に介護タクシーに乗るときの介助

STEP
2

移送

介護タクシーで病院へ同乗

STEP
3

降車介助

実際に介護タクシーを降りるときの介助

STEP
4

受診手続き、移動介助

院内での手続き、移動の介助

STEP
5

この段階まで来た後、待合で名前を呼ばれたとします。

診察室内での衣服の着脱、ベッドへの移動、体位変換(いわゆる院内介助)などは、医療機関スタッフの仕事であるため、原則として介護保険の算定対象とはなりません。

しかし厚労省通達では「場合により介護保険の算定対象となる」とされており、ここでいう「場合により」について、以下の3要件が示されています。

院内介助が介護保険の算定対象となるための3要件

・適切なケアマネジメントがなされている
・院内スタッフによる対応が難しい
・利用者が介助を必要とする心身状態である

「院内介助である」だけを理由に、介護保険算定対象から外さないよう、厚労省から各自治体に通達されている点も見逃さないでおきましょう。

通院等乗降介助と身体介護中心型介護の違い

車両への乗降介助の前後に、介護サービスが生じる場合も、98単位の通院等乗降介助しか算定できないのでしょうか。

この項では、全体のケースを6つに分類して、介護保険の適用関係を検討してみます。

要介護1~5 院内介助を行わない場合

往路98単位、復路98単位の通院等乗降介助のみ。

要介護1~5 院内介助を行う場合

往路98単位、復路98単位の通院等乗降介助のみ。(この場合院内介助は通院等乗降介助に包括すると考えます)

要介護4~5 往路の乗車前、復路の降車後に20~30分の介助を行うが、院内介助を行わない場合

往路、復路それぞれに、身体介護中心型を算定します。(当然、運転中時間を除く)

要介護4~5 往路の乗車前、復路の降車後に20~30分の介助を行い、院内介助を行う場合

往路、復路を一括して、身体介護中心型を算定します。(当然、運転中時間を除く)

要介護1~5 往路乗車前に、乗車とは関係ない身体介護を30分~1時間 院内介助なし

往路、復路それぞれに、身体介護中心型を算定します。(当然、運転中時間を除く)

要介護1~5 往路乗車前に、乗車とは関係ない身体介護を30分~1時間 院内介助する

往路、復路を一括して、身体介護中心型を算定する。(当然、運転中時間を除く)

院内介助を行わないことで、いったん訪問介護サービスが途切れ、往路復路がそれぞれ別々の訪問介護サービス提供となる点を理解しましょう。

このコラムのまとめ

以上が訪問介護事業における通院等乗降介助です。通院等乗降介助を介護保険算定するためには、介護タクシー業の許可が必要となります。

また、単に介護タクシーの乗車サポートに留まる場合の介護保険単位と異なり、乗車・降車の前後に身体介護が含まれると、一定金額以上の介護保険単位となるので、十分な計画を立てて、介護タクシー事業に臨みましょう。

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【この記事の執筆・監修者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
※ご契約がない段階での記事に関するご質問には応対できかねます。
 ご了承お願い致します。

◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
タスクマン合同法務事務所 代表
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