運営規定、重要事項説明書、サービスの拒否、ケアマネへの謝礼。訪問介護の開業前に知っておきたい運営上のポイント(注意点)
訪問介護事業を実際に運営する際の、注意点をピックアップしてみました。。運営規定、重要事項説明書の記載内容、サービス拒否の問題に加えて、訪問介護運営上「やってはいけないこと」について解説します。それぞれ法律で定められているものばかりなので、これから経営者として訪問介護事業を運営する方には必修の知識です。
このコラムの推奨対象者
・訪問介護事業の設立開業に必要な運営規定、重要事項説明書を理解したい人
・訪問介護サービス提供時の禁止事項を理解したい人
・サービス提供を拒否することが出来る条件を理解したい人
このコラムの信頼
タスクマン合同法務事務所は、介護障害福祉事業の開業と運営支援に特化した合同法務事務所です。このコラムのリライト(更新)時点である、令和3年7月、介護障害福祉事業の累積開業支援実績が、400社を越えました。日々、多くの訪問介護事業所の運営相談をお受けしています。安心してお読みください。
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訪問介護開業に必要な運営規定とは?
訪問介護事業者には法令上、次の7点を定めた運営規定を作成することが義務付けられています。
訪問介護事業の運営規定記載事項
1.事業の目的及び運営方針
2.従業者の職種、員数および職務の内容
3.営業日および営業時間
4.訪問介護の内容(身体・生活・乗降介助)と利用料
5.実施地域(目安。これを越えて運営しても良い)
6.緊急時の対応方法
7.その他運営に関する重要事項
運営規定は事業の根幹をなすものです。専門家の作成支援を得ることをお勧めします。
訪問介護利用者に渡す重要事項説明書とは?
利用者と訪問介護の「利用契約」を結ぶ前に、利用者に会社の概要を知ってもらう必要があります。そのために、先に解説した「運営規定」をダイジェスト版にまとめ、次の内容をプラスして利用者に情報提供することが義務付けられています。
訪問介護事業の重要事項事項説明書記載事項
1.訪問介護員の勤務体制
2.事故発生時の対応
3.苦情処理体制
(これらと「運営規定のダイジェスト版」を併せることで、「重要事項説明書」になります。)
以上3点を、運営規定ダイジェスト版と一括でパンフレット形式にしてもOKです。また他に介護関連の指定事業がある場合、一体として作成することも認められています。
ここで言う「訪問介護員の勤務体制」については、訪問介護事業の人員基準、常勤換算法を十分に理解しましょう。こちらのコラムも併せてご参照ください。
訪問介護サービス提供は拒否できる?
ここで良く質問を受ける点について、法令に基づきご回答します。
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運営規定や重要事項説明書に記載したサービスを拒否する(断る)ことは出来ますか?
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原則としては、「訪問介護事業者は正当な理由無く、訪問介護サービスの提供を拒んではならない」とされています。
逆説的に読むと、「正当な理由があれば、訪問介護サービスの提供を拒んでも良い」とも言えます。それでは「正当な理由」とはどのようなことを指すのでしょうか?
通達によりますと、訪問介護事業者がサービスを拒否できる「正当な理由」として次の3点が示されています。
訪問介護サービスを断る事ができる「正当な理由」
1.事業所の訪問介護員では、利用申込に応じきれない場合(員数キャパ)
2.対応エリア外である場合
3.利用申込に対して適切な訪問介護を提供することが困難な場合(技術)
なお、訪問介護事業者がサービス提供を断る場合の措置として、居宅介護支援事業所(ケアマネージャー)への連携を行うべきこと、他の訪問介護事業者を紹介すべきことなどが義務付けられている点も、理解しておきましょう。
禁止事項(家族介護、サービスの偏り、ケアマネへの謝礼)
続いて訪問介護事業運営にあたり禁止されている基本的事項を確認していきます。
同居家族への介護
訪問介護員は同居家族に対して訪問介護サービスを提供することはできません。家族には民法上の「相互扶養義務」があるため、介護保険サービスを利用する前に、「自助努力しなさい」という趣旨です。
一方で、介護職員Aの家族に対して、同じ事業所に属する介護職員Bが訪問介護サービスを行うことは問題なく実施可能です。
訪問介護サービスに偏りがあってはならない
訪問介護事業者は「身体介護」、「生活援助」を総合的に提供する必要があり、いずれか一方に偏ることは禁じられています。これに反すると指導対象となりますので注意しましょう。
「身体介護」、「生活援助」の詳細については、こちらのコラムをご参照ください。
また身体介護の中サービス「入浴、排泄、食事介助」、生活援助の中のサービス「調理、洗濯、掃除」の中においても、偏りがあってはいけません。
訪問介護と並行で別事業を運営する場合の規制
さらに法令は、訪問介護と並行で「別事業」を運営している場合にも規制を設けています。
例えば、別事業(商品販売、中古品買取、マッサージ業等)の顧客確保を主目的として、訪問介護を「入口のサービス」とするようなケースです。
法令では、「介護保険から報酬を得る訪問介護事業である以上は、訪問介護事業を主としなければならない」と規制されています。
ケアマネージャーへの謝礼は絶対禁止
訪問介護事業所に利用者の紹介を行う、居宅介護支援事業者(ケアマネージャー)に対して、金銭、物品を問わず謝礼を行うことは絶対禁止されています。(例外なし)
金銭や物品でなくとも、何らかの「経済的利益」を与えることを全面的に禁止しているので注意しましょう。
加えて、居宅介護支援事業者(ケアマネージャー)に対して、利用者に必要のない訪問介護サービスを、「介護計画に組み込むことを働きかけること」も法令で禁じられています。(不当な働きかけの禁止)
このコラムのまとめ
運営規定、重要事項説明書、サービスの拒否、ケアマネへの謝礼・・・。
今回のコラムでは、訪問介護事業の開業相談時に、頻繁に質問を受ける項目を解説しました。開業予定者の中には、「重要事項説明書はどこで手に入るか」という疑問を持っている方もおられます。このコラムを読んで頂ければ、それらの疑念が払拭されたことと思います。。
特に運営規定は、指定申請内容の根幹をなすだけでなく、事業運営上のカギとなるため、作成時には当社のような専門会社にご相談されることをお勧めします。
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【この記事の執筆・監修者】
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ご了承お願い致します。
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
◆奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
◆タスクマン合同法務事務所 代表
〒542-0066 大阪市中央区瓦屋町3-7-3イースマイルビル
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