このコラムを3分読めば理解できること

・訪問介護事業の設立開業に必要な運営規定、重要事項説明書が理解できる
・訪問介護サービス提供時の禁止事項が理解できる
・サービス提供を拒否することが出来る条件を理解できる

訪問介護事業を実際に運営する際の注意点をピックアップしてみた。それぞれ法律で定められているものばかりなので、事業運営の際には必修の知識だ。このコラムでは訪問介護開業にあたり、誤解を生じやすい部分について専門家が詳しく解説する。

このコラムの目次

①訪問介護開業に必要な運営規定とは?
②訪問介護利用者に渡す重要事項説明書とは?
③訪問介護サービス提供は拒否できる?
④禁止事項(家族介護、サービスの偏り、ケアマネへの謝礼)
⑤このコラムのまとめ

①訪問介護開業に必要な運営規定とは?

訪問介護事業者には法令上、次の7点を定めた運営規定を作成することが義務付けられている。

1.事業の目的及び運営方針
2.従業者の職種、員数および職務の内容
3.営業日および営業時間
4.訪問介護の内容(身体・生活・乗降介助)と利用料
5.実施地域(目安。これを越えて運営しても良い)
6.緊急時の対応方法
7.その他運営に関する重要事項

運営規定は事業の根幹をなすものであるため、専門家の助力を得ながら作成することを強くお勧めしたい。

②訪問介護利用者に渡す重要事項説明書とは?

利用者と訪問介護の利用契約を結ぶ前に、利用者に会社の概要を知ってもらう必要がある。そのために、①で解説した運営規定をダイジェスト版にまとめ、次の内容をプラスして利用者に情報提供しなければならない。

1.訪問介護員の勤務体制(2.5名の常勤換算法の詳細はこちら
2.事故発生時の対応
3.苦情処理体制

以上3点を、運営規定ダイジェスト版と一括でパンフレット形式にしても良い。また他に介護関連の指定事業がある場合、一体として作成しても良い。

上記の書類を一般的には重要事項説明書と呼んでいる。

③訪問介護サービス提供は拒否できる?

ここで問題となるのが、

「運営規定や重要事項説明書に記載したサービスを拒否することは出来るのだろうか?」

という点である。この点にお答えしよう。

法令により、

「訪問介護事業者は正当な理由無く訪問介護サービスの提供を拒んではならない」

とされている。

逆説的に読むと、「正当な理由があれば、訪問介護サービスの提供を拒んでも良い」とも言える。それでは「正当な理由」とはどのようなことを指すのだろうか。

通達によると、訪問介護事業者がサービスを拒否できる「正当な理由」として次の3点が示されている。

1.事業所の訪問介護員では、利用申込に応じきれない場合(員数キャパ)
2.対応エリア外である場合
3.利用申込に対して適切な訪問介護を提供することが困難な場合(技術)

なお、訪問介護事業者がサービス提供を断る場合の措置として、居宅介護支援事業所(ケアマネージャー)への連携を行うべきこと、他の訪問介護事業者を紹介すべきことなどが義務付けられている。

④禁止事項(家族介護、サービスの偏り、ケアマネへの謝礼)

続いて訪問介護事業運営にあたり禁止されている基本的事項を確認しておこう。

1.同居家族への介護

訪問介護員は同居家族に対して訪問介護サービスを提供することはできない。家族には相互に扶養義務があるため、介護保険サービスを利用する前に、自助努力しなさい、という趣旨だ。

一方で、介護職員Aの家族に対して、同じ事業所に属する介護職員Bが訪問介護サービスを行うことは問題ない。

2.訪問介護サービスに偏りがあってはならない

訪問介護事業者は身体介護、生活援助を総合的に提供する必要があり、いずれか一方に偏ることは禁じられており、これに反すると指導対象となる。
>>身体介護、生活援助についての詳細はこちら

また身体介護の中の「入浴、排泄、食事介助」、生活援助の中の「調理、洗濯、掃除」の中においても偏りがあってはならない。

さらに法令は厳しく「偏り」を規制する。

訪問介護と並行で別事業を運営している場合、本来の訪問目的が別事業(例:物品販売、サービス業)である場合、付随的な位置づけで訪問介護を行うことを厳しく規制している。

介護保険から報酬を得る訪問介護事業である以上は、訪問介護事業を主としなければならないという訳だ。

3.ケアマネージャーへの謝礼は絶対禁止

訪問介護事業所に利用者の紹介を行う、居宅介護支援事業者(ケアマネージャー)に対して、金銭、物品を問わず謝礼を行うことは絶対禁止されている。(例外なし)

金銭や物品でなくとも、何らかの経済的利益を与えることを全面的に禁止しているので注意しよう。

加えて、居宅介護支援事業者(ケアマネージャー)に対して、利用者に必要のない訪問介護サービスを、介護計画に組み込むことの働きかけも法令で禁じられている。(不当な働きかけの禁止)

⑤このコラムのまとめ

運営規定、重要事項説明書、サービスの拒否、ケアマネへの謝礼・・・。

訪問介護事業の開業相談時に、頻繁に質問を受ける項目を解説した。開業予定者の中には、「重要事項説明書はどこで手に入るか」という疑問を持っている方すら存在する。このコラムを読んでもらえれば、それらの疑念が払拭されることと思う。

特に運営規定は、指定申請内容の根幹をなすだけでなく、事業運営上のカギとなるため、作成時には当事務所にご相談されることをお勧めしたい。

訪問介護の人員基準について電話相談

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【この記事の執筆・監修者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士、行政書士、奈良県橿原市議会議員
タスクマン合同法務事務所 代表
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