訪問介護の立ち上げに必須【サービス提供責任者と管理者】資格要件と必要人数は?訪問介護設立時の必要最低基準を理解しよう

サービス提供責任者と管理者
井ノ上剛(社労士・行政書士)

訪問介護事業所に、必ず配置しなければならない、サービス提供責任者と管理者。その資格要件と必要人数を充分に理解していますか?また介護職員との兼任ルールは分かりますか?このコラムでは訪問介護事業のサービス提供責任者と管理者の人員基準について、介護保険法の専門家が、法律の基準に従って詳しく解説します。

このコラムの推奨対象者

○訪問介護事業所のサービス提供責任者、管理者の資格要件を理解したい方
○専従、兼務、常勤換算などの用語を理解したい方
○最低人数による訪問介護事業所の開設方法を理解したい方

このコラムの信頼性

タスクマン合同法務事務所は、介護障害福祉事業のご支援に特化した法務事務所です。毎月多数の訪問介護事業所を設立支援しています。このコラムのリライト(更新)時である令和3年6月時点、介護障害福祉事業の立ち上げ支援実績が400社を超えました。安心してお読みください。

サービス提供責任者の8つの責務

訪問介護事業所に常勤配置しなければならないサービス提供責任者(略称:サ責)には、法令で8つの責務が課せられています。

サービス提供責任者(サ責)の責務

1.訪問介護の利用申込に関する調整を行う
2.利用者の状態変化、サービスに関する意向を定期的に把握する
3.サービス担当者会議への出席により、居宅介護支援事業所と連携を図る
4.訪問介護員に具体的な援助目標、援助内容、利用者状況を伝える
5.訪問介護員の業務実施状況を把握する
6.訪問介護員の能力、希望を踏まえた業務管理を行う
7.訪問介護員に研修、技術指導を実施する
8.サービス内容の管理について必要な業務を実施する

訪問介護事業のサービス提供責任者に関する人員基準

訪問介護事業所には、利用者員40名ごとに、1人の常勤専従のサービス提供責任者を配置する必要があります。

「サービス提供責任者は訪問介護員の中から選ぶ」という仕組みであるため、サービス提供責任者であっても、訪問介護員の人員基準2.5名のうちの1名に算定することができます。

2.5名の常勤換算については、こちらのコラムをご参照下さい。

介護・障害者福祉 設立編
訪問介護員の人員基準 2.5名の常勤換算とは?必要な資格は
【訪問介護事業の人員基準】 2.5名の常勤換算とは?必要な介護資格は?訪問介護事業を開業するときの人員基準の考え方

サービス提供責任者について、最もよく受けるご質問はこちらの2点です。

訪問介護員とサービス提供責任者は兼任できますか?

兼任できるかどうかと言うより、そもそも訪問介護員のうち最低1名以上をサービス提供責任者とするため、当然に兼任できます。

管理者とサービス提供責任者は兼任できますか?

業務に支障のない範囲で、兼任できます。

サービス提供責任者の専従とは?

訪問介護事業所のサービス提供責任者については、訪問介護事業に専従することが求められます。

「専従」とは訪問介護事業のサービス提供時間を通じて、訪問介護事業以外のサービスに従事しないことを指します。

しかし例外的に、利用者に対する訪問介護事業に支障のない場合は、同一敷地内にある次の介護サービスに従事することが認められています。

サ責が兼任できる他の介護サービス

・定期巡回・随時対応型訪問介護看護
・夜間対応型訪問介護

利用者が40人を越えれば常勤換算法を取っても良い

訪問介護事業所のサービス提供責任者は、40人ごとに1名配置する必要がありますが、利用者が40人を超える事業所では、サービス提供責任者を常勤換算法に基づいて配置することができます。

整理すると次表の通りとなります。(利用者は前3カ月を歴月で判断)

訪問介護事業所のサービス提供責任者配置基準 早見表

利用者数 原則的なサ責数 常勤換算によるサ責数
40以下 1 1
41~80 2 1
81~120 3 2
121~160 4 3
161~200 5 4
201~240 6 4
241~280 7 5
281~320 8 6
321~360 9 6
361~400 10 7

常勤換算法を使った方が、配置すべきサービス提供責任者が少なく済むことがお分かり頂けると思います。

ご参考までに、同一の建物に居住する一定数以上の利用者に対して訪問介護を提供する場合、報酬減算が生じるため、下記コラムのご参照をお勧めします。

同じ建物に住む要介護利用者に、まとめて訪問介護サービスを提供した場合の減算
同じ建物に住む要介護利用者にまとめて訪問介護サービスを提供した場合の減算【老人ホーム・サ高住・賃貸マンション】

利用者が50人を超えた場合のサービス提供責任者の基準

次の3つの条件をすべて満たす場合、利用者50人ごとに1人のサービス提供責任者を置くことで足ります。

50人に1人のサ責配置が認められる条件

・サービス提供責任者を3名以上配置する
・うち1名が主としてサービス提供責任者業務に従事する
・サービス提供責任者業務が効率的に行われている

「主として従事する」とは、訪問介護員としてのサービス提供が1カ月30時間以内であり、残りの時間をサ責として従事できることを指します。

また「効率的な方法」とは、業務支援ソフトによるシフト管理、利用者情報のシステム化などを指します。

利用者が50人を超える訪問介護事業所のサ責配置基準 早見表

利用者数 原則的なサ責数 常勤換算によるサ責数
50以下 3 3
51~100 3 3
101~150 3 3
151~200 4 3
201~250 5 4
251~300 6 4
301~350 7 5
351~400 8 6
401~450 9 6
451~500 10 7

訪問介護事業所のサービス提供責任者の資格要件

訪問介護事業所でサービス提供責任者としては配置するには、次のいずれかの資格要件を満たしている必要があります。

サービス提供責任者の資格要件

・介護福祉士
・実務者研修修了者
・介護職員基礎研修課程、1級課程、看護師
 

訪問介護事業所の管理者に関する人員基準

訪問介護事業所では、管理者を1名置かなければなりません。

管理者は事業所の従業員と業務の管理を一元的に行うことが義務付けられていますが、管理者になるための資格要件は特にありません。

管理者は訪問介護員または、敷地内の他事業所との業務を兼ねることは可能ですが、他の事業所において、介護・看護職員として兼務することは認められていません。

このコラムのまとめ

一般的にはサービス提供責任者が管理者を兼ねることが多いです。管理者がサービス提供責任者を兼ねることで、

管理者=サービス提供責任者=1人の訪問介護員

を同時に満たすことになり、残り1.5名の訪問介護員を確保することで、最低人数による訪問介護事業の開業を計画することができます。

効率的な人員配置により、低コストでの開業計画を立てましょう。

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