訪問介護の初回加算、2人で訪問介護、夜間早朝割増、緊急時訪問介護加算、認知症専門ケア加算について理解しよう!

小規模多機能型居宅介護
井ノ上剛(社労士・行政書士)

このコラムでは、訪問介護の「加算」について解説します。訪問介護の初回加算、夜間・早朝サービス提供の場合の報酬算定方法、緊急時訪問介護加算、認知症専門ケア加算、2人で訪問介護サービスを提供した場合の報酬算定方法を理解していますか?まずは訪問介護の「基本報酬」をしっかり理解したうえでお読みください。

このコラムの推奨対象者

・訪問介護における初回加算の仕組みを理解したい方
・2人以上で訪問介護を行う場合の要件を理解したい方
・夜間早朝割増の仕組みを理解したい方
・緊急時訪問介護加算の算定ルールを理解したい方
・認知症専門ケア加算を理解したい方

このコラムの信頼性

タスクマン合同法務事務所は、介護障害福祉事業を専門的に支援する合同法務事務所です。毎月数多くの訪問介護の開業相談にご対応しています。このコラムのリライト(更新)時の令和3年7月時点、介護障害福祉事業の開業支援実績が、累積で400社を超えました。安心してお読みください。

このコラムを読み進める前に・・・

「訪問介護の基本報酬の理解がちょっと不安だな・・・」と思う方は、先にこちらのコラムをお読みください。

訪問介護開業前に理解しておきたい、訪問介護の基本報酬
訪問介護開業前に理解しておきたい、訪問介護の基本報酬|2時間ルール、20分未満のサービス提供、身体介護と生活援助の違い

訪問介護における初回加算

過去2カ月間に、あなたの訪問介護事業所でサービス提供を行っていない利用者に対して、新たに訪問介護計画を作成して訪問介護サービス提供を開始する場合、初回加算として200単位を算定することができます。

訪問介護における初回加算が算定できるタイミングは、次の4つのいずれかとなります。

訪問介護の初回加算のタイミング

・サービス提供責任者(以下サ責という)が初回の訪問介護を行う
・他の訪問介護員が初回の訪問介護を行った月内に、サ責が訪問介護を行う
・他の訪問介護員の初回の訪問介護にサ責が同行する
・他の訪問介護員が初回の訪問介護を行った月内に、再度サ責が同行する

なおサ責同行時、サ責は最後まで滞在する必要はなく、利用者の状況を確認した上で途中で現場を離れても結構です。

ここでご説明しているサービス提供責任者(サ責)については、こちらのコラムで詳細を解説しています。

サービス提供責任者と管理者
訪問介護の立ち上げに必須【サービス提供責任者と管理者】資格要件と必要人数は?訪問介護設立時の必要最低基準を理解しよう

2人の訪問介護員でサービス提供した場合の加算

訪問介護では、同時に2人の訪問介護員が1人の利用者に対して訪問介護を行ったときに、所定単位数の2倍の単位数を算定することができます。

しかし、2人の訪問介護員によるサービスを行うためには、次のいずれかに該当し、利用者または家族の同意を得る必要がある点に注意しましょう。

2人の訪問介護員で2倍の単位数を算定できる条件(いずれか1つに該当)

・利用者の体重が重く、1人の訪問介護員では介護が困難な場合
・暴力、迷惑行為、器物破損行為が懸念される場合(介護職員保護のため)
・エレベーターのない建物で2階以上から利用者を外出させる場合

夜間、早朝に訪問介護サービスを提供した場合の加算

介護保険制度における基本報酬は、8時から18時の時間帯のサービスを原則としています。例外的に、次の時間帯の訪問介護サービス提供には、時間帯に応じて割増の加算が算定できることを理解しましょう。

夜間・早朝の割増加算

・6時~8時:早朝加算(25%増し)
・18時~22時:夜間加算(25%増し)
・22時~翌6時:深夜加算(50%増し)

これら早朝、夜間、深夜の加算については、介護計画上、訪問介護サービスの提供開始時刻が、上記時間帯にある場合に限り、算定することができます。

ただし、開始時刻が上記時間帯にある場合であっても、全体のサービス提供時間のうち、ごく一部しか上記時間帯にかかっていない場合には、加算を算定することができない点にも注意が必要です。

緊急時訪問介護加算

利用者の要請に基づいて、訪問介護事業所のサービス提供責任者(サ責)が、居宅介護支援事業所のケアマネジャーと連携し、計画外の緊急訪問介護を行った場合、緊急時訪問介護加算として、1回について100単位を加算することができます。

この場合、緊急対応を優先するため、サ責がケアマネジャーと事前連携できなかった場合は、事後的な連携でも認められます。

また、この緊急時訪問介護加算については、次の特例が認められている点も理解しておきましょう。

緊急時訪問介護加算算定時の特例

・20分未満の訪問介護提供でもOK
・いわゆる2時間ルール(2時間のインターバルを空ける)が適用されない

20分未満の訪問介護、2時間ルールについては、こちらのコラムでご確認ください。

訪問介護開業前に理解しておきたい、訪問介護の基本報酬
訪問介護開業前に理解しておきたい、訪問介護の基本報酬|2時間ルール、20分未満のサービス提供、身体介護と生活援助の違い

認知症専門ケア加算(令和3年改)

訪問介護における「認知症対応力」を向上させていく観点から、令和3年度から新たに認知症専門ケア加算が創設されました。

認知症ケア加算の単位数

認知症専門ケア加算Ⅰ 3単位/日
 ・認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の者が50%以上
 ・認知症介護実践リーダー研修修了者が上記対象者20名に対して1名
 ・従業員にに対する認知症ケアに関する会議を定期開催

認知症専門ケア加算Ⅱ 4単位/日
 ・加算Ⅰに加えて認知症介護指導者養成研修修了者を1名以上配置
 ・職員ごとの認知症ケア研修計画を策定して実施

超高齢社会を迎え、訪問介護事業所に認知症対応力が求められます。社内体制を整備して、可能な限り認知症専門ケア加算を算定しましょう。

このコラムのまとめ

以上が訪問介護における加算説明です。基本報酬と加算を十分な理解して、開業に備えましょう。

☑訪問介護の設立・開業前に読んでおきたい記事

【令和6年度法改正対応】訪問介護の特定事業所加算(体制要件編)|特定事業所加算ⅠからⅤごとに解説|訪問介護の開業講座⑮コラムサムネイル
【令和6年度法改正対応】訪問介護の特定事業所加算(体制要件編)|特定事業所加算ⅠからⅤごとに解説|訪問介護の開業講座⑮New!!
【令和6年度法改正対応】2人の訪問介護員による報酬加算|夜間・早朝・深夜加算|訪問介護の開業講座⑭コラムサムネイル
【令和6年度法改正対応】2人の訪問介護員による報酬加算|夜間・早朝・深夜加算|訪問介護の開業講座⑭
【令和6年度法改正対応】生活援助の単位数|通院等乗降介助と身体介護の適用関係、院内介助の位置付け|訪問介護の開業講座⑬コラムサムネイル
【令和6年度法改正対応】生活援助の単位数|通院等乗降介助と身体介護の適用関係、院内介助の位置付け|訪問介護の開業講座⑬
【令和6年度法改正対応】訪問介護における身体介護の基本報酬|20分未満の身体介護と2時間ルール|訪問介護の開業講座⑫コラムサムネイル2
【令和6年度法改正対応】訪問介護における身体介護の基本報酬|20分未満の身体介護と2時間ルール|訪問介護の開業講座⑫
【令和6年度法改正対応】訪問介護報酬の算定構造|基本報酬と加算減算の計算実務をサービスコード表から|訪問介護の開業講座⑪コラムサムネイル
【令和6年度法改正対応】訪問介護報酬の算定構造|基本報酬と加算減算の計算実務をサービスコード表から|訪問介護の開業講座⑪
【令和6年度法改正対応】訪問介護の会計処理方法|区分会計・部門会計 4種類の会計処理ルール|訪問介護の開業講座⑩コラムサムネイル
【令和6年度法改正対応】訪問介護の会計処理方法|区分会計・部門会計 4種類の会計処理ルール|訪問介護の開業講座⑩
【令和6年度法改正対応】訪問介護事業者マニュアル整備《運営指導対策》高齢者虐待防止とBCPは減算|訪問介護の開業講座⑨
【令和6年度法改正対応】訪問介護事業者マニュアル整備《運営指導対策》高齢者虐待防止とBCPは減算も|訪問介護の開業講座⑨
【令和6年度法改正対応】運営指導(実地指導)に備えて記録保存!訪問介護計画、サービス提供記録等|訪問介護の開業講座⑧
【令和6年度法改正対応】運営指導(実地指導)に備えて記録保存!訪問介護計画、サービス提供記録等|訪問介護の開業講座⑧
【令和6年度法改正対応】重要事項説明書、運営規程、訪問介護利用契約書|ひな型様式ダウンロード可!|訪問介護の開業講座⑦
【令和6年度法改正対応】重要事項説明書、運営規程、訪問介護利用契約書|ひな型様式ダウンロード可!|訪問介護の開業講座⑦
【令和6年度法改正対応】料金受け取りルール|領収証の印紙、割引、交通費請求条件、自費サービス|訪問介護の開業講座⑥
【令和6年度法改正対応】料金受け取りルール|領収証の印紙、割引、交通費請求条件、自費サービス|訪問介護の開業講座⑥
【令和6年度法改正対応】生活援助の提供条件|身体介護と生活援助、生活援助中心型の提供条件、提供拒否|訪問介護の開業講座⑤
【令和6年度法改正対応】生活援助の提供条件|身体介護と生活援助、生活援助中心型の提供条件、提供拒否|訪問介護の開業講座⑤
【令和6年度法改正対応】運営基準の一般項目|ケアプランと訪問介護計画、法定代理受領、秘密情報の取扱|訪問介護の開業講座④
【令和6年度法改正対応】運営基準の一般原則|ケアプランと訪問介護計画、法定代理受領、秘密情報の取扱|訪問介護の開業講座④
【訪問介護の事務所要件】自宅兼事務所でも開業できる?事務室・相談室の設備基準|令和6年度法改正対応_訪問介護の開業講座③小
【令和6年度法改正対応】訪問介護の事務所要件|自宅兼事務所でも開業できる?事務室・相談室の設備基準|訪問介護の開業講座③
【令和6年度法改正対応】訪問介護のサービス提供責任者|サ責の人員基準、業務、資格要件|訪問介護の開業講座②
【令和6年度法改正対応】訪問介護のサービス提供責任者|サ責の人員基準、業務、資格要件|訪問介護の開業講座②
【令和6年度法改正対応】訪問介護の人員基準|訪問介護員の資格要件と人数、常勤換算法、管理者の兼務|訪問介護の開業講座①小
【令和6年度法改正対応】訪問介護の人員基準|訪問介護員の資格要件と人数、常勤加算法、管理者の兼務|訪問介護の開業講座①
令和6年介護報酬改定【第2回 】訪問介護編|特定事業所加算は?同一建物等居住者減算は?BCP未実施減算は?
令和6年介護報酬改定【第2回 】訪問介護編|特定事業所加算は?同一建物等居住者減算は?BCP未実施減算は?
夜勤明けと休日の関係|割増賃金と休日労働【訪問介護・訪問看護・障害者居宅介護・重度訪問介護・障害者グループホーム】
夜勤明けと休日の関係|割増賃金と休日労働【訪問介護・訪問看護・障害者居宅介護・重度訪問介護・障害者グループホーム】
【令和4年10月開始ベースアップ等支援加算 実践編】処遇改善加算を取得済で10月ベースアップ加算を取得する場合の計画書
【令和4年10月開始ベースアップ等支援加算 実践編】10月からベースアップ加算を取得する場合の計画書の書き方
【令和4年10月開始ベースアップ等支援加算 入門編】処遇改善加算額を拡充|収入を3%(月額9000円相当)引き上げへ
【令和4年10月開始 ベースアップ等支援加算 入門編】処遇改善加算額を拡充|収入を3%(月額9000円相当)引き上げへ
訪問介護とは?介護保険制度を詳しく理解して介護事業の開業に備えよう!
訪問介護とは?在宅型の介護制度を正しく理解して、訪問介護の開業に備えよう【居宅介護・重度訪問介護・1号事業との違い】
訪問介護員の人員基準 2.5名の常勤換算とは?必要な資格は
【訪問介護事業の人員基準】 2.5名の常勤換算とは?必要な介護資格は?訪問介護事業を開業するときの人員基準の考え方
サービス提供責任者と管理者
訪問介護の立ち上げに必須【サービス提供責任者と管理者】資格要件と必要人数は?訪問介護設立時の必要最低基準を理解しよう
訪問介護の事務所要件 自宅兼事務所の申請は?整えるべき設備の基準は?
訪問介護の事業所(事務所)の広さ基準・要件 他の業種との兼業は?自宅兼事務所の申請は?整えるべき設備備品の要件は?
訪問介護の開業前に知っておきたい 運営上のポイント
運営規定、重要事項説明書、サービスの拒否、ケアマネへの謝礼。訪問介護の開業前に知っておきたい運営上のポイント(注意点)
訪問介護開業前に理解しておきたい、訪問介護の基本報酬
訪問介護開業前に理解しておきたい、訪問介護の基本報酬|2時間ルール、20分未満のサービス提供、身体介護と生活援助の違い
小規模多機能型居宅介護
訪問介護の初回加算、2人で訪問介護、夜間早朝割増、緊急時訪問介護加算、認知症専門ケア加算について理解しよう!
訪問介護の通院等乗降介助とは?算定条件と仕組みを解説
訪問介護の通院等乗降介助とは?介護タクシーとの関係は?院内介助は?介護保険法 訪問介護の通院等乗降介助の算定条件と仕組み
同じ建物に住む要介護利用者に、まとめて訪問介護サービスを提供した場合の減算
同じ建物に住む要介護利用者にまとめて訪問介護サービスを提供した場合の減算【老人ホーム・サ高住・賃貸マンション】
介護保険事業の指定前研修
介護保険事業の指定前研修とは?大都市圏で義務化されている「指定前研修」のスケジュールについて。法人設立のタイミングも比較
障害居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護 指定時の従業者要件について
障害者向けの在宅介護サービス【居宅介護・重度訪問介護・同行援護・行動援護】の違いと指定申請時の従業者要件を比較
居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護の障害福祉サービス費 報酬加算減算一覧表
【居宅介護・重度訪問介護・同行援護・行動援護】 障害福祉サービス費基本報酬と加算減算を分かりやすく一覧表で解説
処遇改善加算を分かりやすく説明するコラムブログ
処遇改善加算とは?【計画届・実績報告】の仕組みを網羅。最新の処遇改善加算制度をどのサイトよりも分かりやすく解説!
2019年10月特定処遇改善加算の仕組みについて
特定処遇改善加算(2019年/令和元年10月スタート)の基礎知識|どのサイトよりも分かりやすく解説
特定処遇改善加算(Ⅰ)と人員配置加算(特定事業所加算・福祉職員配置等加算・サービス提供体制強化加算)の関係を分かりやすく解説
特定処遇改善加算(Ⅰ)と人員配置加算(特定事業所加算・福祉職員配置等加算・サービス提供体制強化加算)を分かりやすく解説

【この記事の執筆・監修者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
※ご契約がない段階での記事に関するご質問には応対できかねます。
 ご了承お願い致します。

◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
タスクマン合同法務事務所 代表
 〒542-0066 大阪市中央区瓦屋町3-7-3イースマイルビル
 (電話)0120-60-60-60 
     06-7739-2538